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2021.07.14 クリーン化記事

粒子のサイズと管理方法

クリーンルームの異物管理を行う際、管理対象を明確にして、その特性を踏まえて対策を行うことで、効率的で有効な管理が実現できます。ここではJIS規格に倣って微粒子と粗大粒子に分けて考えてみます。

微粒子は浮遊してほとんど沈降しない粒径1μm以下の粒子であり、粗大粒子とはそれより大きい粒径10~100μmの粒子のことを指します。粗大粒子は、無風状態の場合、重力と空気抵抗によりゆっくりと落下するものの、この速度より大きな上昇気流があると上昇し、その後、気流に乗って飛散します。

微粒子は光散乱式の自動粒子計数機(パーティクルカウンタ)で計測でき、作業環境中に発塵源があれば比較的容易に特定できます。機器・資材や作業員からの持ち込み塵埃も同様です。特定した後は発塵元への対策や塵埃の回収方法の工夫により環境改善が可能です。発塵源の付近を除けば、微粒子は作業環境中を均一に分布していると考えられますので、気流の設計と換気回数の調整により必要な清浄度を目指して管理することができ、管理目標となる製品等の塵埃に対する暴露量を減らすことが可能となります。さらに、静電気対策を行うことで製品等の管理目標への付着の可能性を減らせます。

一方、粗大粒子は上昇気流のないところでは時間が経つと落下し、装置や作業台等の表面や製品自体に沈着します。床に堆積した粗大粒子は作業員の歩行等により生じた上昇気流に乗って環境中に舞い上がります。粗大粒子は、作業環境中に均一に飛散しているとは想定できず、また気流に乗って移動しているため、空気中の浮遊粒子数を数えるパーティクルカウンタによる測定は有効な管理指標となりにくいです。

そのため、管理対象個所を特定したうえで、表面清浄度を管理することが一つの手法となります。例えば、シリコンウェハ等のサンプル採取器具を一定時間設置し、その表面に堆積した塵埃量を測定することで管理指標とすることができます。JASMが提供しているRACCARを使うと容易に塵埃量を測定することが可能です。

環境中の微粒子濃度は比較的容易に測定できるため、主要な管理指標とされることが多いですが、それだけでは粗大粒子が十分に管理できません。特にフィルム加工、塗装・コーティング、電子部品の組み立て等の現場では、微粒子よりも粗大粒子の方が製品不良の原因となっていることが多いです。対象を明確にして管理することでさらなる品質改善が期待できます。